「物流」におけるコストと品質 [part1] 物流品質と効率の関係 

2021 9/29
「物流」におけるコストと品質 [part1] 物流品質と効率の関係 

著者: 船井総研ロジ株式会社 ライン統括本部 コンサルティング事業部 部長 渡辺庸介

物流専門のコンサルティングサービスを提供している船井総研ロジ(株)の視点で「物流品質」を向上するための施策として、効果の高い取り組みを紹介させていただきます。 第1回目は『物流品質と効率の関係』をお伝えいたします。

船井総研ロジ株式会社 ライン統括本部コンサルティンググループ 副部長 渡辺庸介

はじめに

品質に焦点をあてたディスカッションの中で「品質と効率はトレードオフの関係にある」という意見をしばしば耳にします。
「品質を高めようとすると効率が低下する」という意味ですが、我々コンサルタントの中ではそのような理解はしていません。

大前提として「一定の品質を保持したうえで、役割を担った業務を全うすること」が「仕事」であるという考え方はベースにあります。品質保持のために割く工数は必要なものであり、それを含めたうえでの効率化を図らなければなりません。求める品質を保持するために必要な動きと過剰な動きは区分できます。
品質保持に必要な時間を残しても、効率を向上できる取り組みは物流業務の中にはまだまだ埋もれています。

また、粗悪な業務品質が与える影響はやり直しにかかる時間だけではありません。リカバリーに必要な事務作業、電話対応、返品対応など、思っている以上に周囲を巻き込んでしまい、その作業がコストとして負担となっています。ひとつの作業だけでなく広い範囲での効率に影響を与えることになります。
品質を上げるだけでリカバリーにかかる工数は削減されます。

そのような考え方を基に物流品質を考えると、一定の品質を保持できる作業手順を繰り返し回すことができると、余計な品質確認動作は必要なくなり、効率も向上できるといえます。

ここで注目すべき点は下記3点です。

POINT 1:一定の品質 / POINT 2:作業手順の決定と浸透 / POINT 3:繰り返し回す

POINT 1:一定の品質

物流現場を見ると「品質」に対する認識が作業担当者によって異なる場面が散見されます。

・どのような状態でお客様の手元に届くとどのような問題となるのか?
 (原因と結果)
・どこまで確認するのか?(深さ)

単なる作業方法だけを現場担当者に説明しても、理解は個人によって異なります。作業者には先ず、どのような状態でお客様の手元に届くことがどのようなクレームになるのかを理解していただくことが重要です。それが理解されると、決められた作業方法だけでなく、お客様に届けられる状態を想像して、良否に気が付くようになります。「判断基準」ができるのです。

また、どれだけ深く品質確認を実行するのかも個人差が現れます。細かなことが気になる作業者もいれば、全く意に介せず自分のペースで進める作業者もいます。品質に関わる動作を1回で終わる人もいれば、3回繰り返す作業者もいます。
「どこまで」=「何回、どのような動作をするのか?」まで決めなければ一定の品質は保持されないといえます。

POINT 2:作業手順の決定と浸透

標準的な作業手順が決まっていない現場もあります。作業の手順を決めなければ作業者それぞれのやり方が蔓延することになります。ついてはそれぞれの作業品質が生まれることになります。ここで取り組むことは、作業品質を保持できる作業手順を標準作業として管理者が決めることです。作業者任せにするのではなく、品質保持の要となる動作を埋め込んだ標準作業手順を管理者が決めることです。そして決めた標準作業が現場で実行されているのかを定期的に観察して、実行できない作業者を一人一人指導することが必須になります。このサイクルを疎かにして、決めた作業が現場に浸透することはありません。

POINT 3:繰り返し回す

POINT1、2は品質を作り出すために必要な視点でした。POINTの3つ目は効率につながります。POINT2にありましたように、標準作業手順が決まると作業者の迷いは一気に逓減されます。その結果作業は止まることなく、一定のスピードをもって繰り返すことが可能になり、生産性は向上されます。ここで大事なことは作業者が繰り返し作業できるように、現場で発生するイレギュラーを管理者が排除、再発防止することです。そうすることで作業者の手が止まる時間が短縮し、生産性が向上することになります。

取り組み次第で作業品質と作業効率は両立できます。
皆様も是非3つのPOINTで現場作業を見直してみてください。

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