日本貨物航空株式会社が精密機器輸送の実態調査で“輸送品質の見える化”に成功!!

2021 8/30
日本貨物航空株式会社が精密機器輸送の実態調査で“輸送品質の見える化”に成功!!

著者: 「輸送品質.com」 運営責任者/森松産業(株) 代表取締役 森松 長照

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国際物流において自社の精密機器がどのように輸送され、その後空港内でどのような取り扱いがなされているのかご存知だろうか?
現状荷主側ではほとんど把握することができないのが実情ではないだろうか。

荷主企業が求める物流への高品質ニーズは日々高度化、多様化している中、顧客の様々なニーズに対応すべく、本邦唯一の国際線貨物専門航空会社として活躍する日本貨物航空㈱(以下NCA)では「安全はすべてに優先する!」という方針の下、これを実現するために、全社横断的に約2年の歳月をかけて空港内グランドハンドリングの荷扱い品質の徹底的な品質確保を目指して様々な取り組みを行っている。

同社は昨年より継続的に取り組んでいる輸送検証、実証実験では超ハイスペック振動衝撃レコーダーを利用し、グランド内における荷扱いの全ての工程を10分割し、さらにそれぞれを(1)慎重、(2)標準、(3)通常の運用では発生し得ないラフな荷扱いの3段階を設定し全30シーンを実際に職員が再現し、その全てを数値でデータ化、映像化することで“輸送品質の見える化”に成功した。

全10工程は以下のとおり。

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❶ トラックからの荷下ろし。(フォークリフト)
❷ 荷下ろし後のフォークリフトでの走行および床置き。
❸ PMCパレットへの積み付け。
❹PMCパレットを積み付け台からドーリーへ移行。
❺ドーリーで倉庫内から屋外へ搬送。
❻ ドーリー走行中の段差(U字溝)。
❼ ドーリーの発車時、停車時。
❽ PMCパレットをメインデッキローダーへ移行し昇降。
❾ 貨物室内へのULD引き込み。
❿ 貨物室内のULD移送。

さらに、衝撃の大きさを示す加速度(G値)の測定だけでなく、フォークリフトやドーリー車の移動や路面の振動までも含めた周波数分析を行い、通常の荷扱いレベルが貨物にどのような影響を与えているのかというところまで徹底的に研究、解析を進めている。

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この実験データを元に同社は専業メーカーと共同で防振パレットの開発に着手し、空港内グランドハンドリングだけでなく、実際の航空機に搭載した実証実験も開始している。特に品質レベルの高い日本国内はもとより、アジア、米国、EUなどの世界各拠点の荷扱いレベルも考慮し更なる輸送品質向上に取り組んでいる。

これにより国際物流における各拠点の振動・衝撃リスクを数値で把握し、防振パレットに技術応用することで、特にデリケートな半導体製造装置や医療装置、プラント機器など総重量数トンに及ぶ超精密機器の輸送を想定したスーパーセンシティブサービスの更なる高度化を目指している。

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同社のプロジェクトリーダーは、こうした社内の『荷扱いレベル』を定量的に見える化でき、かつ、実践できている企業こそが高品質サービスという付加価値を提供できる企業なのではないでしょうか。と語る。

特にフォークリフトやドーリーの走行速度制限を設けるなど具体的なアクションの社内規程を設けることで現場の荷扱いにおける定量的な行動基準を数値で捉え、現場の作業効率を落とすことなく、高品質なサービスレベルを維持提供できる。

各工程の職員同士がコミュニケーションを図り組織的に共有化することで仕事への誇りと自信を持ってヒューマンエラーの発生を限りなく0%に近づける安全な現場環境を創るきっかけになったという点では非常に実りある成果となった。

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輸出メインにしている精密機器や重量物などの装置のメーカーでは、自社の大切な貨物が空港内でどのような振動や衝撃を受けているのか把握しているだろうか?

そもそも空港内ではいったいどんな作業工程があり、どのような荷扱いが行われているのか。また、そうした荷扱いは貨物にどのような影響を与えているのか。

実際荷主は、
『まったく把握していない。』『物流会社に預けたあとはブラックボックスになっている。』という企業も少なくないのではないだろうか。

今回、国際線貨物専門航空会社として活躍する日本貨物航空株式会社(NCA)では、スーパーセンシティブ輸送サービスのさらなるレベルアップを目指し、トラックで空港内に持ち込まれた貨物が飛行機に搭載されるまでの全10工程を実際に職員が再現することでその全てを数値でデータ化、映像化することで“輸送品質の見える化”に取り組みました。

トラックから搬入~航空機搭載までの全10工程

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❶ トラックから荷降
❷ 荷降後のフォーク走行(&床置き)
❸ PMCパレットへの積付
❹積付台からドーリーへ移行
❺ドーリー倉庫内→外へ
❻ ドーリー段差走行(U字溝)
❼ ドーリー発車停車
❽ メインデッキローダーへ移行&昇降
❾ 貨物室内へのULD引き込み
❿ 貨物室内のULD移送

さらに、各工程での荷扱いケアレベルを(1)慎重、(2)標準、(3)ラフな荷扱い(通常の運用では発生し得ないラフな荷扱いをあえて再現してみました)の3段階を設定し、加速度や周波数解析データを比較しました。

準備

重量300kgのダミー貨物を製作し、箱の上部、底部の3箇所に振動衝撃レコーダーを搭載して測定。

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取得した振動衝撃の波形データから周波数分析・衝撃値解析を行った。(サンプルデータ例)

サンプルデータ(1)

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トラック荷卸しからフォーク走行 高加速度発生部分(PSDとJIS比較データ)

サンプルデータ(2)

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PMCパレットへの積みつけ時の周波数分析データ

サンプルデータ(3)

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積みつけ台からドーリーへ移行時の衝撃比較データ

サンプルデータ(4)

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貨物室内へのULD引き込み(時系列加速度分布比較データ)

それでは実際の数値データを見ていきましょう。

ここでは最も分かり易い『衝撃値』を中心に紹介していくことにします。
各工程での作業レベル(3段階)の違いによって実際の衝撃値に大きな差が見られるだろうか。

❶ トラックから荷卸し、床置き

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【解説】
ラフな荷扱いが、標準の10倍以上の数値を記録した。フォークの昇降操作時においてスピードの加減により大幅に衝撃を軽減できることが分かった。

❷ 荷下ろし後のフォークリフト走行及び床置き

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【解説】
❶と同様に、ラフな荷扱いが、標準の10倍以上の数値を記録した。特に床置きの際はフォークの昇降作業に気をつけるだけで大きく衝撃を軽減できることが分かった。

❸ PMCパレットへの積みつけ

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【解説】
特に大きな衝撃は記録されなかった。❶、❷と同じフォークリフトの作業ではあるがPMCパレットの枠に収める必要があり作業が『標準』『慎重』ともに1G以下であり丁寧であることが分かった。

❹ PMCパレットを積みつけ台からドーリーへ移行

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【解説】
PMCパレットからドーリーの固定点へスライドして移行する際の前後方向の衝突が衝撃として記録されている。強くぶつけなければかなり衝撃は軽減される。

❺ ドーリーで倉庫内から屋外へ搬送

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【解説】
衝撃レコーダーがドーリーの車輪の上近くに設置しているため走行振動をダイレクトに受けていると考えられる。
実際の中身の製品は緩衝材で保護されていることが前提のため衝撃値は軽減されると考えられる。また、『標準』『慎重』では段差で車輪が同時に落ちない様に片方ずつジグザグ走行により速度を抑えており、かなり衝撃を軽減することができている。走行速度に制限を設けることで衝撃を最小限に抑えることができる。

❻ ドーリー走行中の段差(U字溝)

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【解説】
ラフな荷扱いでは速度を落とさずにU字溝の段差へ向かって走行したことでかなり大きな衝撃を記録した。逆に『慎重』では速度を落として走行したところ、1.34Gしか衝撃は記録されなかった。同じ作業でも走行速度の大小で衝撃を最小限に抑えることができることを証明している。

❼ ドーリーの発車時、停車時

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【解説】
牽引車とドーリーの連結部分が鉄の部品のため緩衝効果が弱く衝撃を記録した。こちらも走行速度とブレーキの加減に注意することで『慎重』では1.50Gまで衝撃を抑えている。やはり走行速度の大小がポイントになることを証明している。

❽ PMCパレットをメインデッキローダーへ移行し昇降

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【解説】
こちらは機械での作業のため『標準』のみのデータとなる。上昇動作時は1G~2Gの振動。途中で約3G~5G程度の衝撃を記録した。

❾ 航空機貨物室内へのULD引き込み

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【解説】
床面にコントローラー制御のローラーが付いており貨物を自由に動かすことが出来る。こちらも機械での作業のため大きな衝撃の差は見られない。突き当たりで止まる衝撃は貨物を細かく操作し動かすことで減少させることができている。

❿ 航空機貨物室内のULD移送

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【解説】
❾同様に床面にコントローラー制御のローラーが付いており貨物を自由に動かすことが出来る。こちらも機械での作業のため大きな衝撃の差は見られない。突き当たりで止まる衝撃は同様に細かく操作することで減少させることができる。

解析結果のまとめ

特に大きい衝撃値を記録していたトップ3は以下の3箇所だった。

❷ 荷下ろし後のフォークリフト走行及び床置き (通常の運用では発生し得ないラフな荷扱い時:37.45Gを記録)
❻ ドーリー走行中の段差(U字溝) (通常の運用では発生し得ないラフな荷扱い時:37.05Gを記録)
❺ ドーリーで倉庫内から屋外へ搬送 (通常の運用では発生し得ないラフな荷扱い時:14.02Gを記録)

これらの3箇所は、いずれも通常の現場では発生し得ない“ラフな荷扱い”を再現した時のデータである。
しかしながら、いづれも人間の手や車両など操作のスピード加減が介在する箇所であることが分かる。

逆に『丁寧』荷扱いでは、いずれも実測値で0.7G~1.34Gと非常にセンシティブな荷扱いレベルを実現している。

つまりこのことからも、現場での荷扱い品質レベルは人的な安全教育や安全意識の向上、または社内ルールの策定などによって現場の走行速度に制限速度を設けるなどの取り組みによって格段に品質レベルを上げることができるということが言える。

今回使用した振動衝撃レコーダーは箱の底部に直接取り付けているため、ダイレクトの衝撃を記録しています。
実際の貨物輸送では、中身の製品は緩衝材によって保護されていることが前提であり、今回のように直接かかる衝撃よりは軽減されていると考えられます。

また、今回のレポートでは詳しく述べませんでしたが、同社では振動衝撃の波形データを取得しさらに詳しく周波数解析(PSD解析)や衝撃値解析を行い荷扱い品質のさらなる向上に取り組んでいます。

お客様の大切な荷物を預かる物流企業としてここまで自社の輸送品質のレベルアップに取り組んでいる企業はいったいどれほどあるだろうか?
物流企業の中には品質向上を唱えながらも、実際の輸送品質レベルを把握していなかったり、現場のルールに落とし込めていない企業も多いのではないでしょうか。

これを機会に貴社でも、自社の輸送品質レベル向上の第一歩として荷扱い全工程の実態調査に取り組んでみてはいかがでしょうか。

企業イメージ

日本貨物航空株式会社

日本貨物航空株式会社(NCA)は、日本で唯一の貨物専門航空会社。
豊富な実績とノウハウを活かし、輸送戦略のスペシャリストとしてハイクオリティの航空輸送サービスを展開しています。当社では「安全はすべてに優先する」という方針の下、これを実現するために、全社横断的に日々の安全活動を行っています。

資本金:100億円 従業員数:752名(2017年4月時点)
本社:千葉県成田市成田空港内 NCAライン整備ハンガー
大代表:TEL:0476-30-3001 FAX:0476-30-3844 URL:http://www.nca.aero/