
防振パレット完全ガイド|振動・衝撃の基本、素材選びと失敗しない選定手順
防振パレットの仕組み・効果から素材比較、試験と選定手順までを実務目線で解説し、最適構成に一気に近づく指針を示します。
「エアサス車に替えたのに不具合が減らない」
「共振が怖くて長距離輸送に踏み切れない」
現場でよくある悩みに対し、防振パレットを“パレット+防振材+固定方法のユニット”として設計する考え方を整理します。本記事は、効果・素材・試験・価格を押さえ、自社の貨物に最適なタイプと設定を導き出すための実践ガイドです。
防振パレットとは?(概要/効果)
定義:防振パレットは、パレットと防振ユニット(金属サスペンション/エアサスペンション、パッド、粘弾性材など)を一体化した、輸送中の振動・衝撃リスクを抑えるソリューションです。荷重に応じた固有振動数を設計し、路面起因のランダム振動や積み替え時の衝撃を低減します。
効果の要点
- 数Hz〜十数Hz帯の微振動で加速度を低減
- 積み替え時の落下・持ち上げなどの衝撃を吸収
- 位置決めと締結(クランプ/バインダー)の最適化で再現性を向上

素材と構造の違い(プラ/木製/金属ベース/粘弾性材)
代表的な素材・ユニットと特長
- プラパレット:軽量・衛生的。水濡れや繰り返し使用に強いが、板厚により荷重や長期使用時のヘタリが出ることも。
- 木製:コスト効率は高いが、環境・水分で寸法変化の可能性。
- 金属ベース(スチール/アルミ):高剛性で位置決めやジグ固定に最適。
- 粘弾性パッド:吸収・制振に優れ、狙いの帯域にチューニング可能(温度依存性に注意)。
- サスペンション(空気ばね/ばね+ダンパ):低固有振動数を実現しやすく、体感上「Zero」に近づける設計思想がとれる(※絶対ゼロではない)。
比較の観点
- 目的:振動軽減重視/衝撃低減重視/位置決め重視
- 荷重・積載重量:上限・シリーズのラインナップ
- 使用温度・環境:温湿度、化学薬品との相性
- メンテ性/納期/価格/補修パーツの入手性
共振と周波数の基礎(エアサスでも残る微振動)
トラック輸送では、数Hz〜十数Hzにわたる上下・ピッチング・曲げなどの振動モードが観測され、条件によっては3.5Hzや10〜12Hz付近が支配的になる場合があります。共振を避けるには、ワーク側・パレット側の固有振動数設計が重要です。モーダルシフト(鉄道・内航海運)や幹線輸送の見直しは、CO2削減やドライバー不足などの環境変化に対応する合理策としても有効です。

試験・検証のやり方(JIS準拠と実車)

室内試験
- 垂直振動試験:JIS Z 0232:2020(対応国際規格:ISO 13355)に基づき、輸送過程の振動に対する耐振性を評価。
- 衝撃試験:落下・持ち上げ・積み替え時を模擬し、防振材や粘弾性材のヘタリも確認。
実車検証
- エアサス車などで走行試験を行い、データロガーで加速度・PSDを解析。速度帯や路線差を把握し、支持点や締結条件を最終調整。
- 解析条件(窓関数・ライン数など)を固定し、室内波形と実車波形を突き合わせて再現性を担保。

選定のステップ(サイズ・荷重・位置決め・締結)
- 荷重・重心:常用/最大荷重、板厚・補強、積載面サイズ(例:1100角、1200×1000など)。
- 周波数帯:対象の共振帯域(ワーク・架台・ジグ)を把握し、除去したい帯域に合わせて材質・構造を選択。
- 位置決め/ジグ:クランプやバインダーで再現性と安全性を確保。
- 環境:温度・湿度・薬品・物流導線(フォークリフト/コンテナ)を確認。
- 運用:用途別ラインナップ・型番・資料(カタログ/詳細スペック)・納期・価格・サポート体制。
- ユニット化:パレット+防振材+固定方法を一体設計し、“Zeroに近づける”目標で最適化。
ケーススタディ(失敗と成功)
失敗談:共振を見落とした例
精密測定器で特定の速度域だけ不具合が多発。ワークの固有振動数(約4Hz)と路面帯域が重なった共振が原因。防振材の種類と配置を見直し、位置決め治具とトルク管理を導入、サイズを1100角→1200×1000に変更し支持点を最適化。結果、不具合率は1/5に低減。
成功例:“パレット+ジグ”のユニット化
金属ベース+クランプ+防振材をユニット化。持ち上げ衝撃はパッドで吸収、走行時は帯域チューニングで加速度を約30%低減。締結はスパナ1本に統一し、作業の属人化を解消。
| 項目 | 確認内容 | 目的/補足 |
|---|---|---|
| 荷重・重心 | 常用・最大荷重、板厚、補強、積載面サイズを確認 | 偏荷重や沈み込みを防止 |
| 周波数帯 | 対象ワークや架台の共振帯域を把握 | 共振を避けた設計を実現 |
| 位置決め・ジグ | クランプ/バインダーの配置とトルクを規格化 | 再現性と安全性を確保 |
| 環境条件 | 温度・湿度・薬品・物流導線を確認 | 材質・構造選定の前提 |
| 運用・保守 | 型番、カタログ、納期、サポート体制 | 継続利用とメンテナンス容易性 |
価格・納期・TCOとCO2(2024年以降の物流を踏まえて)
価格は素材・荷重・ユニット構成で変動しますが、防振パレット導入により過剰梱包の削減、振動衝撃による不具合・再輸送コストの抑制など、TCO低減が期待できます。
CO2観点:1トンの貨物を1km運ぶ際のCO2排出量は、トラックに比べ鉄道・船舶が小さい水準のため、幹線のモーダルシフトで大幅削減の可能性があります。2024年問題(ドライバー時間外上限規制)も踏まえ、幹線の見直しや共同配送を組み合わせれば、輸送品質×生産性×環境の三立が狙えます。
よくある質問(FAQ)
Q1. エアサス車なら防振パレットは不要ですか?
いいえ。エアサスでも数Hz〜十数Hzの微振動は残り、共振が起きる可能性があります。ワーク側の固有振動数に合わせたユニット設計が有効です。
出典:国土交通省 国土地理院
Q2. 室内試験と実車、どちらを優先すべき?
両方必要です。まずJIS Z 0232:2020で傾向を掴み、最終は実車でPSDや加速度の実測を合わせます。
出典:日本規格協会 JSA GROUP Webdesk
Q3. 価格はどれくらい?
素材・荷重・構成で幅があります。こちらのラインナップをご確認ください。また貴社の運用方法や追加機能のご要望などのカスタマイズも対応可能です。
■防振関連製品のラインナップはこちら:https://www.logi-q.com/view/category/boushin
Q4. CO2削減も狙えますか?
幹線を鉄道・船舶へ転換するモーダルシフトはCO2削減効果が大きいと示されています。防振パレット導入は“輸送品質の担保”としてモーダル併用を支える武器になります。
出典:国土交通省
Q5. サイズや型番はどう決める?
荷重・重心・設置点からサイズとか所(支持点)を割り出し、締結条件を規格化。貴社のご要望に合わせてカスタマイズ可能です。
まずはお気軽にお問い合わせください。
まとめ
- 目的: 防振パレットは、振動/衝撃のリスクを低減し、輸送品質と歩留まりを守る中核ツールです。
- 設計: 共振帯を外す設計と実車検証が成功の鍵です。
- 費用: 価格は上がっても、不良・再製作・現地工数まで見たTCOで回収できる可能性があります。
- 環境対応: 2024年以降の物流制約・CO2要件を踏まえ、モーダルシフトや輸送網見直しと合わせて最適解を検討しましょう。
輸送品質を支える、防振技術の最前線へ。
参考・出典
-
国土交通省「物流の2024年問題の概要と取組」など(2024年2月/他)
物流制約と対応策の概説。
出典:国土交通省 水管理・国土保全局 -
国土交通省「モーダルシフトとは」
2023年度試算:トラック207g、鉄道19g、船舶42g(1トンキロあたり)。
出典:国土交通省 -
日本規格協会「JIS Z 0232:2020 包装貨物—振動試験方法」
振動評価の国内標準。
出典:日本規格協会 JSA GROUP Webdesk -
国総研ほか研究資料
トレーラ系の代表的な振動帯域(3.5Hz、10〜12Hz等)の事例。
出典:国土交通省 国土地理院
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監修者:輸送品質.COM ( 森松産業株式会社 )
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