
物流リスクマネジメントの基本と方法:2024年問題以降の実務10ステップ【やさしく解説】
物流の主要リスクと回避策、BCPの要点、実務10ステップをやさしく解説します。
「貨物が破損してクレーム対応に追われた」
「大雨でトラックが動かず、納品が大幅に遅延した」
「倉庫のシステム障害で、丸一日出荷が完全に止まってしまった」
――現場の小さなほころびがサプライチェーン全体に波及し、売上・信頼・コストへ深刻な影響を与える時代です。
本記事は、物流リスクマネジメントの基本から、優先順位の付け方、RTO/RPOを核にしたBCP設計、現場で使えるチェックリストまで、実務に直結する内容をまとめました。
物流リスクマネジメントの基本と重要性
定義
物流リスクマネジメントは、事故・自然災害・人材不足・システム障害などのリスクを特定→評価→対策→訓練→見直しで継続管理し、BCPを実現する取り組みです。核となるのはRTO(目標復旧時間)とRPO(目標復旧時点)の設計です。
現状の背景と重要性
2024年問題やサイバー脅威、災害の激甚化など複合リスクが同時多発し得るため、連鎖を断ち切る総合マネジメント体制が必須です。
想定すべき主要リスクと優先度の付け方
主要リスク一覧(例)
- 自然災害:道路寸断、停電、浸水、輸送停止・遅延
- 事故・破損:衝撃・傾き、温湿度管理不備
- サイバー/システム障害:ランサムウェア、WMS/TMS/EDI障害
- 人材関連:ドライバー不足、属人化
- 国際物流特有:港湾混雑、通関、地政学リスク
- コンプライアンス/保険:契約不備、SLA未定義、補償誤認
優先度づけ:リスクマトリックスの活用
「発生確率」と「影響度」の2軸で評価し、高影響×高確率から対策を実装します。
対策の具体的方法:実践10ステップ(1〜5)
STEP1|現状把握(As-Is)
輸送経路・倉庫設備・情報システム・委託先体制/契約を棚卸し。
STEP2|リスク特定
客観データを根拠に潜在リスクを洗い出し。
STEP3|影響分析
停止時間×粗利等で定量評価+ブランド毀損等の定性評価。
STEP4|優先順位付け
マトリクスで合意形成。経営層を巻き込む。
STEP5|RTO/RPOの設定
重要業務ごとに復旧時間と復旧時点を数値で定義。
対策の具体的方法:実践10ステップ(6〜10)
STEP6|代替策の設計
代替ルート、モーダルシフト、共同配送、緊急在庫。
STEP7|システム&サイバー対策
ネットワーク分離、MFA、遠隔バックアップ、復元演習。
STEP8|教育・訓練
初動手順の演習、現場トレーニングを定期化。
STEP9|契約・保険の見直し
免責/対象外の明確化、補償範囲とBCPの整合。
STEP10|モニタリング&見直し
KPIで継続監視し、環境変化に合わせ改善。
ケーススタディ(失敗からの学び/成功の再現)
事例A|ガラス瓶商品の破損多発(製造業)
要因:微振動と傾き。対策:緩衝材見直し・手順改訂・ルート変更。結果:3か月で破損率67%低減。
事例B|大雨で倉庫が孤立(卸)
対策:気象連動の前倒し出荷、代替ヤード、共同配送。結果:台風期の遅延率が半減。
事例C|ランサムウェアでWMS停止(小売EC)
対策:分離・オフライン手順・復元訓練。結果:RTOを16h→6hに短縮。
よくある質問(FAQ)
Q1. まず何から始めれば?
「現状把握→トップ5リスク特定→RTO/RPO設定」が最短。マトリクスで優先順位づけを。
Q2. 中小企業でもBCPは必要?
必要です。初動手順と代替策の整備だけでも効果大。内閣府の簡易チェックを活用。
Q3. 2024年問題の実務対応は?
標準化(パレット/データ)+共同配送+モーダルシフトの組合せが王道。
Q4. 委託先管理の深さは?
重要度で層別化し、契約の要求事項明確化とセルフチェック評価から。
Q5. 専門会社に相談できる?
可能です。客観評価や改善支援の活用は有効です。
まとめ
重要リスクは複合で発生します。マトリクスで優先度を明確にし、RTO/RPOを羅針盤に継続改善。委託先・契約・保険を含む“面”の対策と訓練が競争力につながります。

監修者:輸送品質.COM (森松産業株式会社)
輸送工程の品質管理とリスク可視化に注力するBtoB向け専門情報サイト。衝撃・傾き・温湿度をデータで捉え、安全・確実なロジスティクスを支援します。
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