倉庫や工場では、荷物の運搬に欠かせないフォークリフト。全国で70万台以上が稼働しているといわれています。物流現場の作業を効率的に進められる便利な機械ではありますが、パワーがあるからこそ、取り扱いには十分注意が必要です。
死傷事故発生件数は、ほぼ横ばいのようにもみえますが、ここ数年間は少しずつ増加傾向にあります。
2020年のフォークリフト事故件数をみると、死傷事故は1989件、死亡事故は31件。死亡事故は3年ぶりの増加となりました。2020年は新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の縮小があり、労働時間が大幅に低下していることをあわせて考えると、フォークリフト事故への安全対策は急務といえそうです。
フォークリフト労働災害の内容
では、実際にどんな災害が起きているのでしょうか。よくあるフォークリフト労働災害の事例をご紹介します。
ケース1 前方の視界が積み荷で遮られていたために、ほかの作業者にぶつかった
荷物を高く積みすぎたことにより、前方で作業中の人や歩行者が視野に入らず、ぶつかってしまうケースが多く発生しています。また、バック運転時に、前方や積み荷にばかり気を取られ、後方の安全確認不足で歩行者に激突したといった事例も少なくありません。
ケース2 フォークリフトで持ち上げたパレットに乗った作業員が転落
フォークリフトによる死亡事故のなかでもっとも多いのが「墜落・転落」です。「フォークリフトで持ち上げたパレット上で、人が高所作業をおこなう」といった、本来のフォークリフトの使い方とは異なる用途外使用によるものが多く報告されています。
ケース3 マストやヘッドガードの間にはさまれた
フォークリフト運転者は、積み込みや積みなおしなど、荷台での作業がつきものです。その作業からフォークリフトに戻る際、誤った操作によりマストやヘッドガードなどの間にはさまれるという事例が起きています。
ケース4 坂道を走行中に急停止して荷崩れが起きた
坂道や未舗装道路では、フォークリフト転倒のリスクが高くなります。急に人が横から出てきたため、急ブレーキをかけたら荷が崩れてしまったという事例です。さらに、転倒した際に運転手が投げ出されたり、荷物の下敷きになったりして、死傷者が出ることもあります。
すぐに実践したいフォークリフトの事故対策
上記のような大きな事故にはならなかったものの、ヒヤリとした経験があるという人が多いのではないのでしょうか。そうした現場では、安全対策を見直す必要がありそうです。フォークリフトの事故対策として、すぐにでも実践できることにはどんなことがあるでしょうか。
運転ルールの徹底
事故を起こさないためには、フォークリフトの運転ルールを設けることが必須です。また、実際に倉庫で起きたヒヤリ・ハット事例をもとに、定期的に運転ルールを見直すことも大切でしょう。
「走行速度は10km/h以下にする」「作業エリア以外には進入しない・人を立ち入らせない」「誘導員を配置する」「積み荷により前方の視界が悪い場合はバックで走行する」「視界が悪い箇所や交差点では一時停止する」「下り坂ではバックで走行する」など、倉庫の特性にあわせて危険なポイントをしっかりと把握し、ルール作りをしていきましょう。
危険予知訓練をおこなう
作業員一人ひとりの意識を高めたいなら、危険予知訓練(KYT)をしてみてはいかがでしょうか。危険予知訓練とは、作業現場で起こりうる労働災害を未然に防ぐために、職場のなかにひそむ危険性を5~6人程度の小さなグループで話し合い、行動する前に解決する訓練のことです。参加者同士が話し合いながら進めていくため、潜んでいるリスクに気づく想像力を高めることができます。
事故防止に役立つアイテムを活用する
ルールや意識改革だけではなく、フォークリフトの事故防止のために開発された商品を使うことも有用です。輸送品質.COMではこんなアイテムを取り扱っています。
フォークリフト用LEDライト
騒音が大きい倉庫や人が多い環境では、光で作業員に注意喚起できるフォークリフト用のライトがおすすめです。床面に明るい光を照射することで、フォークリフトの接近を知らせることができます。光をスポットで照射するタイプ、線(ライン)状に照射するタイプがあります。
パレット滑り防止アタッチメント
金属製パレットやプラスチックパレットは、素材の特性上、どうしても滑りやすく、人身事故や破損事故が発生することがあります。また、雨天での作業時や冷凍倉庫と異なる温度帯の倉庫への往来時なども結露が発生して滑落の原因になります。その対策として、フォークリフトのツメ部分に装着する滑り止めが開発されています。
フォークリフトは、大きな事故につながる可能性がある危険な乗り物です。倉庫で働くすべての人が安心して作業できるよう、こうしたアイテムを使って、安全対策をしっかりおこなっていきましょう。