ダンボールで見かける「こわれもの注意」「天地無用」などのマーク。物流事業に携わる方ならご存知かと思いますが、「荷扱い指示マーク」「ケアマーク」と呼ばれており、JIS規格(JIS Z 0150「包装―包装貨物の荷扱い図記号」)に定められています。
荷扱い指示マークの由来
荷扱い指示マークは、その名の通り、物流過程で作業者に荷扱いの仕方を表すものです。
マークを使うことのメリットは、異なる言語を用いる人同士の間でも機能すること。海外輸送の際にはとくに便利です。JIS Z 0150は国際規格であるISO 780に基づいて作成されているので、規格化されているマークは国際的にも通用します。
ところで、荷扱い指示マークはいつごろから使用されているのでしょうか? 「JIS Z 0150 改正原案作成分科委員会」メンバーでもある日本包装技術協会 金子 武弘氏にお話を伺いました。
「規格が制定されたのは、1966(昭和41)年です。それまではおそらく企業によって使用するマークや使用の有無もバラバラだったのではと思われます。
制定した目的は、貨物の正しい取り扱い方法を指示することで、貨物の保護と作業者の安全確保を促すためです。貨物の保護だけに目が行きがちですが、貨物の中身を把握することができない荷扱い作業者を、事故から守るためのマークでもあるんです。
もちろん、荷扱い指示マークを付けたからといってすべての貨物・作業員の安全が保証されるわけではありませんが、注意喚起することで物損や事故の低減が期待できます」
荷扱い指示マークを使うときの注意点
それでは、荷扱い指示マークを効果的に使用するには、どんなことに気を付ければよいのでしょうか?
「大切なのは、荷扱い指示マークは必要な場合に限って表示することです。また、当然のことですが、荷扱い指示マークは荷物を扱う作業者に、貨物をどのように扱ってほしいかを伝える手段ですので、作業者の方が見えやすい位置に表示することも重要です。よく天面にのみ表示されているケースがありますが、天面に表示すると貨物が積み重ねられたときにマークが見えなくなってしまいます。また、1側面のみに表示した場合も、貨物の重ね方によっては作業者が視認できなくなる恐れがあります」
規格では、「色は黒」「大きさは、全高100 mm,150 mm又は200 mm」とありますが、違う色のものや小さいサイズのものもよく見かけます。
「規格にある図記号の大きさや色は、あくまでも標準的なものです。この規格ができた当初は、ステンシルといって、鉄板を打ち抜いてスプレーで吹き付けて使用することを想定して作られたマークなので、抜き型が作成しやすいように設計されています。
現在、とくにダンボールに使用されるパッケージのデザインはさまざまで、グラフィックにこだわる企業も増えてきました。また、製品によっては全高100㎜という既定のサイズよりもパッケージが小さいものもあります。そういう場合は、視認できる範囲で標準より小さい図記号にしたり、色を変えたり、縦横比を変化させたりなど、柔軟に対応してもよいと規格内でも明記しています」
なるほど、少しくらいならアレンジしてもよいのですね。
「注意したいのは、危険物を輸送するときに使用しなければいけない『危険物ラベル』と混同させるような色は避けることです。赤色、だいだい色および黄色は危険物ラベルで多く使われるため、これと混同させないようにしなければなりません」
貴社で使用している荷扱い指示マークは、規格にのっとってきちんと表示できていますか? 「小さすぎる」「たくさん表示しすぎている」などは、作業者がマークをスルーしてしまう一因にもなります。これを機に、表示を見直してみてはいかがでしょうか。
さて、最後になりましたがここで画像の問題の答えを発表します!
画像のダンボールには、「壊れもの、取扱注意」「水ぬれ防止」の2種類のケアマークが天面に表示されていますが、「壊れもの、取扱注意」の表示位置がNG。
規定では、「4側面の左上もしくは右上に表示することが望ましい」とされています。ケアマークによっては、表示する位置が決められているものもあるので注意が必要です。
それぞれのマークに関しては、次の記事で詳しく解説していますので、こちらもあわせてご覧ください↓↓