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発泡ウレタン緩衝材とは?他の緩衝材との違いと厚みの決め方

段ボール箱の中で精密機器を上下から支える、製品形状に沿って成形された発泡ウレタン緩衝材。

緩衝材が「前回と同じもの」「なんとなく厚めに」で決まっている現場は、決して少なくありません。それで壊れずに届いているうちは問題として表に出てきませんが、いざ破損が発生したときに「なぜその素材で、なぜその厚みだったのか」を説明できないと、次の打ち手が経験則の積み増しにしかならなくなります。

この記事では、発泡ウレタン緩衝材とはどういうものかを整理したうえで、主要な緩衝材6種類との違い、そして厚みを決めるときに本来使うべき判断軸を解説します。カタログ的な列挙ではなく、選ぶための記事です。

箱の構造や機器タイプ別の考え方を含めた梱包設計の全体像は、精密機器の梱包方法をまとめた記事で解説しています。

発泡ウレタン緩衝材とは

発泡ウレタン緩衝材は、ポリウレタンを発泡させてつくる緩衝材です。

はじめに検索意図の整理をしておきます。「発泡ウレタン」で検索すると建築の吹き付け断熱材の情報が多く出てきますが、これは同じ発泡ウレタンでも用途も製品も別のものです。この記事で扱うのは、輸送用の緩衝材としての発泡ウレタンです。

緩衝材としての発泡ウレタンは、大きく2つに分かれます。

  • 既製のウレタンフォーム:シート状や成形品として、あらかじめ発泡・成形されたものを使う
  • 現場発泡:梱包する現場で発泡させ、製品の形をその場で写し取る

以降で扱う「他の緩衝材との違い」は、主に後者の現場発泡の特徴を指しています。

スプレータイプ(缶)との違い

ホームセンターなどで手に入る缶スプレーの発泡ウレタンは、建築物の隙間充填や断熱を目的とした資材です。輸送用の緩衝材とは、発泡後の硬さ、密度の安定性、製品に触れる面の性状が異なります。

梱包用の発泡ウレタンは、後述する緩衝特性(どの厚みで、どの荷重のときに、何Gまで衝撃を下げられるか)が試験で確認されたうえで供給されます。輸送用途で緩衝材として使う場合は、この特性がわかっている梱包用の製品を選んでください。

現場発泡はなぜ製品の形に合うのか

現場発泡は、2種類の液体を混ぜることで発泡が始まります。混ぜてから数秒で膨らみはじめ、箱と製品のあいだの隙間に入り込みながら膨張し、そのまま固まります。結果として、製品の外形に沿った緩衝材ができあがります。

機械を使わないタイプの「インスタパック®クイックRT」の場合、元のサイズの最大27倍まで膨張します。液体の状態で保管できるため、発泡前は保管スペースをほとんど取りません。

現場発泡の方式の違いや、シールドエア社の製品ラインナップについてはインスタパック®の方式とラインナップを解説した記事をご覧ください。

主要な緩衝材6種の比較

発泡ウレタンを選ぶかどうかを判断するには、他の選択肢と並べて見る必要があります。自社で扱っていない資材も含めて整理します。

素材 形状追従性 繰り返し使用 保管スペース 多品種少量への適性 1個あたりの手間
発泡スチロール(EPS) 成形品なら高い/汎用品は低い 割れやすい 大きい 低い(型が必要) 小さい
ポリエチレンフォーム 中程度 へたりにくい 中程度 中程度 小さい
ウレタンフォーム(既製) 中〜高 中程度 中程度 中程度 小さい
気泡緩衝材(ロール状) 高い 低い 大きい(ロールでかさばる) 高い 中程度
エアクッション(充填式) 中程度(隙間充填向き) 低い 小さい(充填前はフィルム状) 高い 中程度(製袋機が必要)
現場発泡ウレタン 非常に高い 条件付きで可能 小さい(液状・折り畳み保管) 高い 中〜大

この表について、2点だけ補足します。

ひとつは、ここに書いたのは運用上の傾向であって、緩衝性能そのものの優劣ではないということです。どの素材が衝撃をよく吸収するかは、素材名だけでは決まりません。同じウレタンフォームでも密度と厚みで挙動は変わります。緩衝性能を比較するときは、次章で説明するクッションカーブ(製品ごとの緩衝特性)で見る必要があります。

もうひとつは、気泡緩衝材とエアクッションを分けている理由です。どちらも空気で衝撃を受ける点は似ていますが、保管性がまったく逆になります。ロール状の気泡緩衝材はロールのままかさばるのに対し、充填式のエアクッションは充填前はフィルム状で場所を取りません。ひとまとめにすると選定を誤ります。

厚みは「重量だけ」では決まらない ― 落下高さと許容加速度から決める

緩衝材の厚みが「5kgだから40mm」のように、重量だけで決められていることがあります。重量は必要な入力のひとつですが、それだけでは厚みは決まりません。

厚みを決めるには、次の4つが必要です。

  1. 製品の荷重
  2. 荷重をかけてよい面積
  3. 想定する落下高さ
  4. 製品が耐えられる加速度

ひとつずつ見ていきます。

静的応力とは

静的応力は、製品の荷重を緩衝材の受圧面積で割った値です。JIS Z 0235:2002(包装用緩衝材料―評価試験方法)では、「荷重を、試験片の試験前の面積で除して、単位面積当たりの荷重で示す値」と定義されています。

σst = W / A
W:荷重 A:受圧面積

ここで押さえておきたいのは、製品の質量だけでなく、実際にどの面で荷重を受けるかによって値が変わるという点です。同じ製品でも、置き方や接触する面が変われば静的応力は変わります。重量だけで厚みが決まらないのは、このためです。

クッションカーブ(最大加速度-静的応力線図)の読み方

緩衝材の性能をあらわす代表的なグラフが、クッションカーブです。横軸に静的応力、縦軸に落下したときのピーク加速度をとり、緩衝材の厚さと落下高さごとに曲線が引かれます。

読み方の手順は次のとおりです。

  1. 想定する落下高さに対応する曲線群を選ぶ
  2. 製品が耐えられる加速度の値で、横に線を引く
  3. その線を下回っている静的応力の範囲を読み取る
  4. その範囲に収まる厚さを選ぶ

実務では、クッションカーブから厚さを算出し、実際に落下試験を行って確認し、必要に応じて合わせ込む、という進め方になります。カーブは出発点であって、試験の代わりにはなりません。

横軸に静的応力、縦軸に最大加速度をとったU字形のクッションカーブ。製品の許容加速度を示す横線を下回る範囲が選定可能な範囲であり、受圧面積を広げると静的応力は左へ移動することを示した概念図。
クッションカーブの概念図。許容加速度の線を下回る静的応力の範囲が、選定できる範囲になる。※概念図であり、特定製品の性能値ではありません。

図のU字形が示しているのは、静的応力が小さすぎても大きすぎても加速度が上がるということです。次の節で、この「左側」の意味を説明します。

受圧面積は、広ければよいわけではない

受圧面積は、広ければよいわけではありません。受圧面積が変わると静的応力も変わり、クッションカーブ上の位置が変わります。クッションカーブには適正な静的応力の範囲があり、面積を広げて静的応力を下げれば、必ず緩衝性能が高まるわけではないためです。

さらに実際の製品には、全面で荷重を受けられない事情があります。ボタンやスイッチが出ていたり、薄くて割れやすい面があったりして、荷重をかけたくない部分がある製品も少なくないからです。

したがって、荷重をかけられる面を特定し、その面積と緩衝材の特性から必要な厚みを判断します。「とりあえず全面で支える」でも「とにかく接触面を広げる」でもなく、支えてよい面を決めるところから始まります。

製品が何Gまで耐えられるかは「製品側」で決まる

許容加速度(製品脆弱値)は、製品そのものの性質です。輸送を測っても出てきません。ここを取り違えると、いくら測定しても厚みの根拠が出てこないことになります。

確認方法は2つあります。

  • メーカーの仕様書に記載がある場合は、それを使う
  • 記載がない場合は、衝撃試験で求める

試験の規格は ASTM D3332「Standard Test Methods for Mechanical-Shock Fragility of Products, Using Shock Machines」です。Method A で臨界速度変化を、Method B で臨界加速度を求めます。求めたい「何Gまで耐えられるか」に直接あたるのは Method B です。

実輸送で実際に何Gが加わっているかは「輸送側」で測る

許容加速度がわかっても、実際の輸送でその値を超えているかどうかは別の問題です。こちらは、記録して確かめます。

G-MENは、取り付けた位置に加わった加速度を3軸で測定・記録する機器です。製品の許容値を測る機器ではありません。ここは混同されやすいところなので、あらためて整理しておきます。

  • 製品が耐えられる加速度 = 製品側の性質(メーカー仕様、または ASTM D3332 の衝撃試験)
  • 実際に加わった加速度 = 輸送側の実態(G-MENシリーズなどの記録計で測定)

製品の許容加速度と実輸送で記録した加速度を照らし合わせることで、現在の梱包や輸送条件を見直す判断材料になります。

両者を比較するときは、取付位置・固定方法・測定条件をそろえて評価し、最終的な梱包仕様は落下試験などで検証します。記録計は設定した記録間隔内のピーク値を記録するため、数値を並べただけで安全と判断することはできません。

そのうえで、緩衝材を厚くするのか、それとも積み方・経路・輸送手段そのものを見直すのか、という切り分けができるようになります。緩衝材だけで解こうとして厚みが際限なく増えていく、という状況を避けられるのもこのためです。

実輸送での測定手順は輸送振動の測定方法|実輸送での手順と注意点を解説、G値の基本的な考え方はG値とは?何Gで壊れる?基準と衝撃の目安|加速度・重力加速度を解説で解説しています。

重量ベースの目安はどう位置づけるか

「5kg未満なら25〜40mm、5〜20kgなら40〜80mm」といった重量ベースの目安は、現場で当たりをつけるには有効です。毎回すべての製品でクッションカーブから設計するのは現実的ではありません。

ただしこれは簡易な目安であり、正式な設計手順は前述のとおりです。日常の梱包は目安で運用し、破損が発生している経路や、高額品・重量物・新規に扱う製品については、落下高さと許容加速度に戻って見直す。この使い分けが、限られたリソースでは現実的です。

現場発泡が向くケース・向かないケース

現場発泡ウレタンは万能ではありません。向き不向きがはっきりしている資材です。

向いているケース

  • 製品の形状が毎回違う
  • 多品種少量で、品目ごとに型を起こすほどの数量がない
  • 木型や成形型を起こすには数量が足りない
  • 重量物・高額品で、破損したときの損失が大きい
  • 緩衝材の保管スペースが取れない
  • レンタル機器のように、返送時に同じ緩衝材を再利用したい

向いていないケース

  • 同一形状を大量に流している(成形品や木型のほうが効率的)
  • 発熱を避けたい製品を扱っている
  • 作業速度が厳しく求められる現場で、まだ習熟していない
  • 手袋着用などの作業ルールを整備できない

後半の3つは、実際に使用したときの記録に基づく注意点です。

  • 発泡は1分程度で固まるため、位置決めをやり直す余裕はほとんどありません
  • 発泡時に発熱するため、手袋の着用が推奨されます
  • 2液の混合は、説明書では交互に10〜20回とされていますが、実際には40回以上必要な場合があります
  • 「握る」「搾る」「ねじる」といった扱い方は危険です

実際の作業手順や初回のつまずきどころは、現場発泡ポリウレタン保護緩衝包装材「インスタパック®クイックRT」をはじめて使ってみた【体験記】にまとめています。

導入方法は2通り

現場発泡ウレタンの導入方法は、機械を使う方式と使わない方式に分かれます。数量と運用の定常性で選びます。

機械システム(インスタパック®)― 量産・定常運用向け

専用の機械で発泡液を供給する方式です。直打ち法、フォームインバック、連続チューブ発泡体など、梱包対象に応じた方式があります。一定量を継続的に梱包する運用に向いています。方式ごとの違いはインスタパック®の方式とラインナップを解説した記事をご覧ください。

インスタパック®クイックRT ― 機械不要、少量・スポット向け

2液があらかじめ袋に封入されていて、機械なしで使えるタイプです。まずは一部の製品や特定の輸送経路だけで試したい場合、あるいは出荷数が読めない場合に向いています。

輸送品質.COMで取り扱っているのは、次の5サイズです。

サイズ バッグ寸法 推奨する箱の寸法(目安)
#10 38.1 × 45.7 cm 20.3 × 20.3 × 20.3 cm
#20 45.7 × 45.7 cm 25.4 × 25.4 × 25.4 cm
#40 45.7 × 61 cm 30.5 × 30.5 × 30.5 cm
#60 45.7 × 61 cm(#40の発泡剤25%増量) 35.6 × 35.6 × 35.6 cm
#80 55.9 × 68.6 cm 45.7 × 30.5 × 30.5 cm

推奨箱寸法は、袋のサイズを選ぶための目安です。製品の保護性能を保証するものではありません。実際の選定では、製品の荷重、荷重をかけてよい面、必要な緩衝材の厚みなども確認します。

#60は#40と同じ寸法のバッグで、発泡剤を25%増量したタイプです。同じ箱でも、より密に充填したい場合に選びます。

もうひとつ、実務で見落とされやすい点があります。使用前のバッグの保管温度は18〜32℃が最適とされています。冬場の低温倉庫にそのまま置いていると発泡が思うように進まないことがあるため、保管場所の温度は事前に確認しておいてください。

サイズや在庫状況はインスタパック®クイックRT の商品ページでご確認いただけます。

まとめ|緩衝材選定チェックリスト

最後に、緩衝材を選び直すときの確認項目を整理します。

  1. 製品の許容加速度は分かっているか(メーカー仕様書、または ASTM D3332 による衝撃試験)
  2. 想定する落下高さは決めたか(輸送手段・積み替え回数・作業実態から)
  3. 荷重をかけてよい面と、その面積は特定したか
  4. その条件で必要な厚みを算出したか(クッションカーブ)
  5. 形状・数量・保管条件から素材を選んだか(6種の比較表)
  6. 試験と実測で検証したか(落下試験/実輸送での加速度記録)

このうち1と6は、緩衝材の仕様だけでは決められない情報です。製品を保有する荷主側が条件を提示し、試験や実測を通じて確認する必要があります。逆に言えば、ここが埋まっていない状態で緩衝材だけを比較しても、根拠のある選定にはなりません。

輸送品質.COMでは、実輸送で加わっている加速度を記録する機器の提供と、測定・検証のご相談を承っています。「今の梱包で足りているのかどうかを知りたい」という段階からご相談ください。

今の梱包で足りているか、確かめるところから相談できます

破損が出ている経路の切り分け、緩衝材の選定、実輸送での測定までサポートします

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よくある質問

素材名だけでは優劣は決まりません。緩衝性能は、素材の種類だけでなく密度と厚み、そして製品の荷重と受圧面積の組み合わせで決まるためです。判断するときは、想定する落下高さと製品の許容加速度を先に決めたうえで、それぞれの緩衝特性(クッションカーブ)で比較してください。運用面では、同一形状を大量に流すなら成形品の発泡スチロール、形状が毎回違うなら現場発泡ウレタンが向く傾向があります。
正式には、製品の荷重、荷重をかけてよい面積、想定落下高さ、製品の許容加速度の4つから、クッションカーブを使って算出します。現場での目安として「5kg未満なら25〜40mm、5〜20kgなら40〜80mm」といった重量ベースの数値も使われますが、これは当たりをつけるためのものです。破損が出ている経路や高額品については、目安ではなく上記の手順で確認することをおすすめします。
固まった緩衝材は、形状が保たれていれば再利用できます。レンタル機器のように、往路で使った緩衝材を復路でも使う運用も可能です。ただし、ひび割れ・つぶれ・大きな変形がある場合や、製品に合わなくなっている場合は交換してください。繰り返し使用を前提とする場合は、あらかじめ輸送試験などで保護性能を確認しておくと安心です。
発泡時に発熱するため、作業時は手袋の着用を推奨しています。また、発泡中のバッグを「握る」「搾る」「ねじる」といった扱いは危険です。混合は所定の方法で行ってください。あわせて、使用前のバッグは18〜32℃で保管するのが最適とされています。詳しい手順と注意点は、製品に付属する説明書と体験レポートを参照してください。
機械が不要な「インスタパック®クイックRT」であれば、必要なサイズを10個からご購入いただけます。特定の製品や輸送経路に限定して試し、結果を見てから展開範囲を決める、という進め方が可能です。どのサイズを選べばよいか分からない場合は、製品と箱の寸法、重量、荷重をかけてよい面、想定する輸送条件をお知らせください。

監修者 輸送品質.COM

森松産業株式会社

「輸送品質.COM」は、物流の中でも特に輸送工程における品質管理とリスクの把握・改善に焦点を当てた、BtoB現場向けの専門情報サイトです。精密機器輸送をはじめとした現場で問題となりやすい、衝撃・傾き・温湿度といった目に見えない輸送リスクについて、測定方法や考え方、活用のポイントを分かりやすく解説しています。

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