輸送品質の改善は何から始めるか|未然防止・実態調査・防振対策の選び方

輸送中の破損を減らすために情報を集めると、衝撃検知ラベルやデータロガー、防振パレット、緩衝材など、さまざまな対策が見つかります。しかし、それぞれの特徴は分かっても、「自社はどれから始めればよいのか」までは、なかなか判断できません。
輸送品質を改善するための取り組みは、目的に応じて3つのアプローチに整理できます。
この記事では、それぞれの役割と、自社が優先すべき対策を判断するための考え方を解説します。
輸送品質の基本や、輸送中に破損が起きる原因から確認したい方は、輸送品質とは?破損原因・改善策・可視化までを体系的に解説をご覧ください。
1. 輸送品質の対策は3つに分けられる
輸送品質.COMでは、輸送品質を改善するための取り組みを「未然防止」「実態調査」「防振対策」の3つに整理しています。
| アプローチ | 目的 | 主な手段 |
|---|---|---|
| 未然防止 | 荷扱いへの注意喚起によって、強い衝撃が加わるリスクを減らす | 衝撃検知ラベル(ショックウォッチなど) |
| 実態調査 | 輸送中に加わる衝撃や振動を数値で把握する | 衝撃・振動データロガー(G-MENなど) |
| 防振対策 | 輸送中に発生する振動が貨物へ伝わるのを抑える | 防振パレット・防振台 |
この3つは、決まった順番で進めるものではありません。また、どれか1つを選べば終わりというものでもありません。自社が抱える課題や対策の目的によって、優先すべきものは異なります。
なお、梱包は3つのアプローチには含めていませんが、輸送中の貨物を守るうえで欠かせない基本対策です。梱包状態を確認したうえで、未然防止・実態調査・防振対策を必要に応じて組み合わせます。精密機器の梱包方法については、精密機器の梱包方法 完全ガイド|破損を防ぐ資材選定・ダブルボックス構造・輸送別対策で詳しく解説しています。
2. 未然防止|注意喚起によって丁寧な荷扱いを促す
何をする対策か
衝撃検知ラベルを貨物の外装に貼り付け、設定G値を超える衝撃を検知すると表示が変わる仕組みを利用します。
衝撃検知ラベルには、主に2つの役割があります。1つは、ラベルが貼られていることで荷扱い者に注意を促すこと。もう1つは、表示の変化によって設定G値を超える衝撃が検知されたことを、開梱前に確認できることです。
ただし、表示の変化は製品の破損を直接示すものではありません。表示が変わっていた場合は、外装だけでなく製品の状態も確認します。
どんなときに向くか
- 破損原因はまだ特定できていないが、すぐにできる注意喚起から始めたい
- 輸送を外部に委託しており、荷扱いの状況を直接確認できない
- 比較的低コストで導入しやすい対策を探している
原因が分からない段階でも、注意喚起はすぐに始められます。ただし、破損が繰り返されている場合、注意喚起だけでは原因の特定や効果の検証まではできません。実態調査を組み合わせ、輸送中に何が起きているのかを確認する必要があります。
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3. 実態調査|輸送中の衝撃や振動を数値で把握する
何をする対策か
衝撃・振動データロガーを貨物に取り付け、その位置に加わった加速度を時刻とともに記録します。
衝撃検知ラベルで分かるのは、設定G値を超える衝撃が検知されたかどうかです。データロガーを使えば、いつ、どの程度の加速度が加わったのかを数値で確認でき、輸送中の衝撃や振動の傾向を把握できます。
どんなときに向くか
- 同じような破損が繰り返されており、原因を切り分けたい
- 実施した対策の効果を、導入前後の数値で比較したい
- 社内や取引先への説明に、客観的なデータが必要
弊社が荷主企業約175社を対象に実施した調査では、破損原因の上位に、落下、振動、フォークリフトによる突き当て、転倒、荷崩れが挙がりました。詳しい結果は、輸送中の破損原因1位は"衝撃"|荷主175社の実態調査から見えた対策のポイントで紹介しています。
ただし、この結果だけで自社の破損原因を判断することはできません。実際の輸送環境を測定し、自社の貨物に何が起きているのかを確かめるのが実態調査です。
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4. 防振対策|貨物へ伝わる振動を抑える
何をする対策か
防振パレットや防振台を使い、荷台から貨物へ伝わる振動を低減します。
未然防止が荷扱い者へ働きかけ、実態調査が輸送中の状況を把握する取り組みなのに対し、防振対策は、貨物へ伝わる振動を物理的に抑える方法です。
どんなときに向くか
- 破損や不具合の原因が振動だと分かっている、または強く疑われる
- 精密機器など、許容できる振動条件が厳しい貨物を輸送する
- 長距離輸送や路面状況の悪い区間で、継続的な振動が懸念される
適した防振方式は、対象貨物の重量や寸法、輸送距離、輸送手段などによって異なります。そのため、既製品では条件に合わない場合もあります。輸送品質.COMでは、対象貨物の特性や輸送条件に合わせた、オーダーメイドの防振パレット・防振装置にも対応しています。
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5. 自社はどれから始めるか
3つの役割を理解しても、自社が何を優先すべきかは、現在の状況によって変わります。次の3点を上から順に確認してみましょう。
判断1:破損は繰り返されているか
繰り返されている → 実態調査から
同じような破損が続いている場合、これまでの対策が十分に機能していないか、実際の原因に合っていない可能性があります。感覚や推測だけで次の対策を選ぶのではなく、まず輸送中の状況を数値で把握することが必要です。
原因を特定できない状態が続く理由については、輸送破損が繰り返される会社に共通すること|原因が「わからないまま」になる理由で解説しています。
判断2:効果を証明する必要があるか
必要がある → 対策を入れる前に実態調査
社内稟議や取引先への説明、品質監査への対応では、対策前後の変化を客観的な数値で示すことが求められます。比較の基準となるデータは、対策を導入する前に取得しておくことが重要です。導入後に、対策前の状態をさかのぼって測定することはできません。
判断3:原因は特定できているか
振動だと分かっている → 防振対策
振動が主な原因だと判断できている場合は、防振パレットや防振台など、振動の伝達を抑える方法を具体的に検討します。
落下や不適切な荷扱いだと分かっている → 未然防止
荷扱い者への働きかけが必要です。衝撃検知ラベルなどを活用すれば、輸送を外部に委託している場合でも注意喚起を行えます。
まだ特定できていない場合
破損が繰り返し発生しておらず、まず取り組みやすい方法から始めたい場合は、未然防止から始める方法もあります。一方、破損が再発している場合や原因を明らかにする必要がある場合は、実態調査を優先します。
実態調査によって輸送中の状況を見える化した事例については、日本貨物航空株式会社が精密機器輸送の実態調査で「輸送品質の見える化」に成功で紹介しています。
自社に必要な輸送品質対策を整理しませんか
輸送中の破損原因と対策の考え方を、
1冊のハンドブックにまとめています。
具体的な対策や製品選定について相談したい方は
よくある質問
- Q1. 3つすべてに取り組む必要がありますか?
-
必ずしも、最初から3つすべてに取り組む必要はありません。それぞれ目的が異なるため、自社の課題に合うものから始めます。ただし、破損が繰り返されている場合は、未然防止や防振対策だけで終わらせず、実態調査も組み合わせることが重要です。
- Q2. 予算が限られています。何から始めるのが現実的ですか?
-
3つの中では、衝撃検知ラベルによる未然防止が比較的低コストで始めやすい方法です。外装に貼り付けて使用するため、専用の読み取り機器や電源も必要ありません。
- Q3. 原因が分からないまま、防振対策から始めてもよいですか?
-
主な原因が落下や不適切な荷扱いにある場合、防振対策では直接対処できません。原因が絞れていない段階では、まず未然防止と実態調査を検討します。
- Q4. 対策の効果はどのように確認しますか?
-
できるだけ同じ輸送ルート・条件で対策前後のデータを取得し、数値を比較します。変化を正しく判断するためには、対策を導入する前の測定が重要です。
- Q5. 測定機器は購入しないと使えませんか?
-
購入せずに試すこともできます。G-MENには3週間のレンタルサービスがあり、実際の輸送ルートで測定したうえで、導入の必要性を検討できます。
監修者 輸送品質.COM
森松産業株式会社
「輸送品質.COM」は、物流の中でも特に輸送工程における品質管理とリスクの把握・改善に焦点を当てた、BtoB現場向けの専門情報サイトです。精密機器輸送をはじめとした現場で問題となりやすい、衝撃・傾き・温湿度といった目に見えない輸送リスクについて、測定方法や考え方、活用のポイントを分かりやすく解説しています。
- 主な監修テーマ
- 輸送工程における品質管理・輸送リスク対策
- 精密機器輸送における衝撃・傾き・温湿度の考え方
- 衝撃検知ラベル・タイマー・ロガーの活用と選定
- 輸送トラブルの原因整理と再発防止の視点