想定の5倍以上の売れ行きを叩き出した、『JR貨物コンテナ弁当』開発者のあくなき探求心

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想定の5倍以上の売れ行きを叩き出した、『JR貨物コンテナ弁当』開発者のあくなき探求心

 

JR貨物コンテナ弁当
公開日:2022年04月26日

たびたびSNSをにぎわせている『JR貨物コンテナ弁当』。開発者のアイデアの源泉はいったいどんなものだろう? そこで今回は、『JR貨物コンテナ弁当』を開発した淡路屋副社長・柳本雄基氏に話を伺った。

目次

発売前のSNS告知で過去最高の“バズり”を経験。発売当日は「不安でいっぱいだった」

淡路屋副社長・柳本雄基氏

淡路屋副社長・柳本雄基氏

関西を中心に販売店舗を持つ神戸の駅弁屋・淡路屋の『JR貨物コンテナ弁当』の売れ行きが好調だ。発売前の広告として打ったツイッターは、270万人もの人たちの目に触れたという。「うれしい反面、不安を覚えながらも、発売当日を迎えました」と、柳本氏は話す。

「発売日の2022年1月1日、元旦にもかかわらず、旗艦店の新神戸店は長蛇の列。東京駅構内の販売店でも、たくさんのお客さまにお並びいただいていたと聞きました。ツイッターやインスタなどのSNS以外では告知をしていなかったので、本当に驚きました。

その後も反響が大きく、このままでは半月で当初の販売予定数を売り切ってしまうような勢いに…。そこで、苦肉の策として1日の生産数を制限し、お弁当箱を十分に調達できるような体制に整えていこうとしたんですが、それでも追いつかず、3月9日にやむなく販売休止という形を取ったんです」

販売休止の告知もユニークで、再び多くの人の目を引いた。

淡路屋_販売停止のお知らせ 『JR貨物コンテナ弁当』一時販売休止のお知らせ 淡路屋ホームページより

「お客さまにいちばん伝わりやすい方法はなにか、ということをいつも考えています。時世柄、いま海上コンテナが足りていない。そこで、弊社も『深刻なコンテナ不足』という表現を使い、HPやSNSでお知らせしたんです」

ちなみに世界的なコンテナ不足は、さまざまな要因が絡み合って起きている。海上コンテナの多くは中国で生産されているが、2019年の米中貿易摩擦によって、コンテナ生産量が低下。さらにコロナウイルスの影響で、コンテナ船の減便、作業員の不足などが発生し、コンテナ貨物・空コンテナが港に滞留し、輸出国にコンテナがなくなるという事態に陥ってしまったのだ。

こうした時流をからめながらの告知。ツイッターは100万人以上が見てくれたという。
そして再販を迎えた4月1日、淡路屋オンラインショップでは0時から販売を開始したが、30分もかからずに売り切れに。現在は盛り上がりも落ち着きを見せ、販売体制も整ったため、比較的すぐに購入できる状態だ。

『JR貨物コンテナ弁当』はどのようにして生まれたのか?

これほどまでの逸品を作り上げるのには、どんな苦労があったのだろうか? 開発のきっかけを柳本氏にお伺いした。

「思いついたのが、2020年のはじめごろ。コロナウイルスが流行の兆しを見せる少し前でした。地元のJR駅で電車を待っていたら、たまたま貨物列車がダーッと目の前を通り過ぎていったんです。『日本全国、いろんな駅弁屋さんがさまざまな車両型のお弁当を出しているけれど、貨物コンテナのお弁当はまだないのでは…?』 そんな思い付きが始まりでした」

しかし、緊急事態宣言が発令され、打ち合わせや商談など、なにをするにも時間がかかる状況に。そんな事情もあり、開発には2年の歳月を要した。

「いちばんのこだわりは、弁当箱の形状。JRさんでいちばん量産されている19D形のコンテナを、可能な限り忠実に再現しました…と言いたいところなんですけど、どうしても妥協せざるを得ない部分もありました。実際のコンテナは観音開きですが、その形状で中にお弁当を入れると、フタを開けたときにこぼれてしまう。メインのお弁当が食べられなくなってしまっては元も子もないので、やむなくフタを上に付ける形に。

それ以外の部分は、ジオラマが作れそうなレベルまで、リアルさを追求しました。側面やフタには、単にラインをひくのではなく、きちんと凹凸をつけて再現しています。また、コンテナターミナルで2段に重ねられたコンテナをよく見かけますが、それと同じように、お弁当箱も重なる形状にしています」

柳本氏と『JR貨物コンテナ弁当』
「なるほど。重なるなら2個買っておくべきでした…」と後悔する筆者に、
「2個でも3個でも4個でも! いくつあっても楽しめると思いますよ」と柳本氏。なんて商売上手…!

ネット上にあるJR貨物19D形のコンテナの写真と『JR貨物コンテナ弁当』の弁当箱を見比べてみると、側面や上面の凹凸の数はほぼ一致している。見た目はコンテナにしか見えない。

リアルさを徹底的に追求したコンテナ弁当は、ジオラマとしても楽しめそうだ

これほどまでに成型を追求した『JR貨物コンテナ弁当』だが、柳本氏はひとつだけ後悔していることがあるという。

「弊社は、バーコードをすべて語呂合わせにするような、ユニークなメーカーなんですけど、成型へのこだわりが強すぎて、印字されているコンテナの製造番号にまでこだわることを忘れてしまったんです…。いま印字されているのは、サンプルとして参考にしていたコンテナの写真の番号そのまま。最後の最後ではっと気づいたのですが、時すでに遅し…。やむなく『42387』というなんの変哲もない番号が記載されています。

しかし、『JR貨物コンテナ弁当』はまだ第一弾。第二弾、第三弾の際には、改めてお弁当の中身を変えるだけでなく、コンテナの製造番号は考え直したいですね。また、色違いのコンテナや、さらにはコンテナだけでなく、貨物列車をけん引する機関車や下の貨車など、いろんな可能性を探っているところです。

暗い話題が多い世の中ですが、1人でも多くの人に楽しんでもらえるコンテンツを作るのが私の仕事。人を喜ばせたいという気持ちが、わたしの原動力です」

コンテナは魅力的…だけどやっぱり駅弁のメインは中身!

『JR貨物コンテナ弁当』

ついついコンテナばかりの話ばかり聞いてしまったが、駅弁のメインはやっぱり中身だ。『JR貨物コンテナ弁当』第一弾の「神戸のすきやき編」といって、甘辛いすきやきが入っている。なぜすきやきに?

「『コンテナ弁当を販売したのがどこの弁当屋なのか』とわかる人は少ないんじゃないかと思いまして、第一弾は、わたしたちが神戸の駅弁屋だということが伝わるように、神戸を連想できるすきやきのお弁当に仕上げました。第二弾、第三弾では、また違うもので、その地域の特性を出した料理を入れたいと思っています」

『JR貨物コンテナ弁当』中身
甘辛く味付けされたご飯のうえに、牛肉、玉ねぎ、糸こんにゃく、豆腐、白菜、ネギ、椎茸、ニンジンが入ってボリューム満点。駅弁なので、冷たくてもおいしく食べられるよう、やや濃い目の味付けだ。深型のコンテナだから、電車でもこぼれにくく食べやすそうだ。駅弁はやっぱり、旅をしながら電車の中で食したい

次はいったいどんなお弁当が誕生するのだろう、と考えるだけでこちらもワクワクする。第二段、第三弾が待ち遠しい。

<text/ひろの>

淡路屋
駅弁発祥の地・神戸で、明治36年に創業した老舗駅弁業者。お弁当のおいしさを追求し、神戸の味を多彩に盛り込んだ『肉めし』や、温まる駅弁シリーズ『あっちっちスチーム弁当』など、数々の人気商品を生み出す。「食はお腹を満たすだけでなく、五感で味わうもの」というモットーから、さまざまなアイデアを駅弁に取り入れ、キャラクター弁当も好評。

『JR貨物コンテナ弁当』(税込1,420円)は、淡路屋の新神戸店・神戸店などの各店舗や関西主要駅の旅弁当販売店、東京駅「駅弁屋 祭 グランスタ店」、淡路屋オンラインショップなどで販売中。

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