「物流」におけるコストと品質 [part6] 物流コンペ

2021 9/29
「物流」におけるコストと品質 [part6] 物流コンペ

著者: 船井総研ロジ株式会社 ライン統括本部 コンサルティング事業部 部長 渡辺庸介

当コラムでは物流専門のコンサルティングサービスを提供している船井総研ロジ(株)の視点で「物流品質」を向上する効果の高い取り組みを紹介させていただきます。第6回目は『物流コンペ』についてコンサルタントの視点を紹介いたします。

船井総研ロジ株式会社 ライン統括本部コンサルティンググループ 副部長 渡辺庸介

この数年で日本国内の物流環境は激変しました。それに応じて弊社のコンサルティング内容にも大きく変化がありました。
その一つが『物流コンペ』をテーマにしたコンサルティングです。

3年前までの物流コンペは『コストダウン』を目的にした委託先変更のコンペが主流でした。
その内容は委託単価の見直しを軸とした、効率化によるコストダウンがその施策の中心となっていました。

 従来の物流コンペ 

【 目的 】コスト削減
【 施策 】拠点集約、倉庫業務改善、運賃見直し、委託単価見直し、パートナー変更

一方で昨年来の物流業界の変化以降の物流コンペは下記のとおりに変化してきています。

 最近の物流コンペ 

【 目的 】安定物流、リスク回避
【 施策 】拠点配置変更、在庫配置検討、倉庫業務改善、配送距離短縮、別配送方法の検索、
自社で担う物流機能の拡充、必要機能を提供できるパートナー選定

荷主と物流企業のパワーバランスが逆転したことで、物流企業が荷物を選択しています。
業務委託の内容も一方的なものではなく、受託側の利益創出も配慮した部分を含む必要があります。そのような配慮だけではなく、業務委託先を選定する『コンペ』は容易な取り組みではありません。一つ間違えると商品は得意先に届かないことになり、企業活動に与える影響は計り知れません。

物流コンペを成功させる大前提として下記の留意点が重要といえます。

1. 目的を明確に設定すること

コンペ進行の中でその目的がコスト偏重になる企業も少なくありません。
とにかく安いコストに執着すると、品質やリスク、継続性が軽視され、
選定を誤ることになります。

2. 正確なRFP(要件定義書)の作成

荷主企業は自社の物流を間違いなく物流企業に伝える必要があります。
特に業務量、スペースに関わるものが間違っていると、倉庫設計や人員調達、生産性に直結するため、即コストの話につながります。最悪の場合、保管能力や作業能力が不足して当日の業務量や保管ができない状況にもなりえます。正確な設計と業務立ち上げができるRFPが新しい倉庫設置の重要ポイントになります。

3. 提案の評価

当初設定したコンペ目標を含め、提案内容が自社の求める内容か否かを客観的に評価することで、既存委託先から移行する理由を明確にすることにつながります。

まとめ

物流コンペは非常に難しい取り組みです。しかし、実施することで今まで取り組めなかった物流の改革も進めることが可能になります。
昨今の国内物流環境は大きく変化し、今までと同じ条件とコストで同様のパフォーマンスを求めることは困難な状況にあります。
そのような中で今後の物流リスクを排除し、安定した物流構築するためには効果的な活動の一つとも言えます。
留意点に配慮し、間違いないパートナー選定に臨んでください。

 

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