輸送中に起こる製品損傷の原因
輸送手段として陸運・航空・海運が挙げられます。
日本では1991年4月よりトラックや貨物機による輸送を貨物列車や貨物船に代替する「モーダルシフト」を推進していますが、それでもトラック輸送が大半を占めているのが現状です。遠距離を長時間かけて走ることになるトラック輸送は、製品にかかる振動のストレスも非常に大きくなります。
振動によって製品損傷が発生する要因のひとつとして「共振」があります。
「共振現象」ってなに?

あらゆるものは「固有振動数」を持っていて、外部から特定の振動が加わると振れ幅が大きくなる現象。
これを「共振現象」といいます。
外部から受けた振動の何倍もの力が発生することで、製品の耐久性を上回ってしまい損傷につながることがあります。
輸送中の振動は大きく分けると
- 路面の凸凹による振動
- サスペンションの振動
- エンジンの回転数などから発生する車体の振動
に分類されます。様々な振動がまじりあった「ランダム振動」が発生しているため、製品の「共振現象」を引き起こしやすくなっています。
身近な共振現象

車のドリンクホルダーに飲みかけのPETボトルを入れていると、
信号待ちの時に「ガタガタ」することないですか?
アクセルを踏んで発進すると「あれっ?音がしなくなった」と気づいたはずです。
これも「共振現象」と言えるでしょう!
信号待ちしているアイドリング時の周波数と、飲みかけのPETボトルの固有振動数がマッチして共振現象が起こっているのです。
アクセルを踏んで共振が収まるのはエンジン回転数による周波数が変化したためです。
製品の振動特性を把握する
輸送中の振動による損傷要因として「共振現象」が関わっているため、製品の振動特性を把握することも大切です。
製品が「共振現象」を引き起こす振動が分かれば、
◎ 共振周波数での耐久性を確認し、製品耐久度UPを図る
◎ 包装設計で共振現象を抑制
などが行えます。
トラック輸送と同じ振動波計で試験ができるのが好ましいですが、
自社製品の振動特性を把握することで振動によるトラブルを未然に防ぐこともできるでしょう。


ミレニアム・ブリッジが開通2日で閉鎖!
歩行振動が原因!?
2000年6月10日、イギリス ロンドンのテムズ川に歩行者専用の橋として「ミレニアム・ブリッジ」が開通した。強風が吹き荒れている中、歩行者数の制限もないまま大勢の人が通行すると突然横揺れが発生。最大70㎜P-Pの振幅となり開通2日で閉鎖された。
原因は歩行者の歩くリズムと橋の固有振動数が合わさり共振現象を引き起こしたためである。その後対策が取られ、2002年2月に通行を再開した。

高層ビルで謎の揺れ!
原因はエアロビクス!?
韓国ソウル市東部にある39階建て複合商業ビル「テクノマート」で原因不明の揺れが発生し、数百人が避難する騒ぎが起きた。
原因は12階にあるフィットネスクラブでの「エアロビクス」と暫定結論づけられた。約20人のエアロビクスによる振動が建物全体の「共振現象」を誘発した。

著者:千田 詠介 (ちだ えいすけ)
アイデックス株式会社
営業技術部

アイデックス株式会社は、
永年に渡り「振動」に携わり、商品の耐振試験や輸送試験、微小部品の整列など独自の加振方式で市場のニーズを製品化してきました。輸送時の商品損傷を未然に防ぐ取り組みが活性化している昨今、「振動」と「衝撃」を融合した新型試験機でお悩みを解決します。